この帯に描かれている柄・文様
Japanese patterns and motifs used in this obi
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菊
Chrysanthemum
日本の花というイメージが強い菊ですが、奈良時代から平安時代にかけて中国から渡ってきたといわれています。ほどなくして宮中行事に用いられるようになり、南北朝時代には皇室の御紋となりました。格式ある日本の秋の花というイメージは、長い歴史の中で培われてきたものなのです。
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桐
Empress tree
清少納言が枕草子にも記した、淡い紫色の花が特徴的な桐。古来中国では空想上の鳥「鳳凰」の棲む木として尊ばれ、その故事が日本にも伝わり、吉祥文様として中世以降天皇の御衣に使われるようになりました。織田信長や豊臣秀吉などにも紋章として用いられ、現在の日本政府の紋章にもなっている植物です。
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蘭
Orchid
蘭花文と呼ばれることもあり、松・竹・梅と組み合わせて「四友」、竹・梅・菊と組み合わせて「四君子」と称される文様です。中国産の蘭が描かれることが一般的でしたが、現在は胡蝶蘭やカトレアなどの洋蘭が用いられることもあります。
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杜若
Iris
燕子花と書かれることもある、5~6月にかけて濃い紫色の花を咲かせる植物です。平安時代から文様として描かれ、着物だけでなく、詩歌や絵画、工芸品などさまざまなものに見ることができます。湿地に生えることから水と一緒に描かれることも多いモチーフです。
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牡丹
Peony
幸福、富貴、高貴を象徴する「百花の王」牡丹は、平安時代から着物の紋様として用いられてきました。単体のモチーフだけでなく、室町時代から近世に至るまで多くの人に好まれた、唐草と組み合わせた「牡丹唐草文様」など、さまざまな形で表現されてきた植物です。
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梅
Plum blossom
奈良時代のはじめに中国から渡ってきた梅は、厳寒の中いち早く花を咲かせることから、忍耐力や生命力を象徴する花として愛好されてきました。学問の神様、菅原道真公が梅の歌を詠んだことから、天満宮の社紋にも用いられています。
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竹
Bamboo
地下茎を張り巡らせ次々と筍を生じる生命力の強さ、節があり青々とした見た目から、「威勢がよく、節度があり、清浄」とされる竹。室町時代よりたくさんの人に親しまれ、江戸時代にはさまざまな表現として展開され現代に受け継がれています。
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流水
Running water
着物や帯に描かれる流水は、多くが小川を表していると考えられていますが、一方で、一滴の水が海に注ぐまでを人生に見立てるなど、多様な表現を見ることもできます。「茶屋辻」や「御所解き文様」などの風景文様、「杜若」や「菖蒲」など、流水との組み合わせが定番となっている文様は数多くあります。